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販売、独立、そしてEYEVANへ。世界を虜にする人気デザイナーが明かす、成長の秘訣とは?

2025.10.9

メガネ愛で独立、独学でデザインを学ぶ

EYEVANではどのような業務をされているのですか?

商品の企画、デザイナーを担当しております。ブランドは、EYEVAN 7285、10 eyevanをはじめ、最近ですとE5 eyevanに携わっております。」

EVEVANにはどのような経緯で入社されたのですか?

「もともとは他のメガネ屋さんで10年ほど働いていました。EYEVANの前身で、オリバーピープルズというブランドを販売していた、オプテックジャパン社が当時の取引先で、その時からそこの商品がすごく好きだったのを覚えています。あとは、商品だけじゃなくて、働いている人がすごく印象的で、素晴らしい人たちでしたね。」

なるほど、それでEYEVANへの転職を決められたのですね!

「いえ、その時は特に転職の希望はなくて。最初の会社で10年勤めたあと、自分でメガネを作りたいと思って独立しました。ただ、もの作りは未経験のまま、個人でやり始めてしまって、当然のことながらうまくいかなくて(笑)。その時に、当時のEYEVANの方からお声がけいただいて、EYEVANの入社を決めたという感じでしたね。」

デザインは独学で学ばれたのですか?

「そうですね、前の会社のつながりで、デザイナーの卵みたいな人にデザインの仕方などを聞いたりして、勉強しました。当時、メガネが好きで、めちゃくちゃメガネを買っていたら、欲しいものが無くなってしまったんですね。それで独学で学んでみたらできそうでしたし、作ってみようとなりました。周りからは無謀なことするねと言われましたね(笑)。」

EYEVANの商品のどういうところに惹かれていたのですか?

「すごく派手ではないんですけど、シンプルで美しいところですね。ディティールや最終的な外観のデザインも、仰々しいわけではないんですが、よく見ていくとすごくこだわりが感じられる。だからパッと見のインパクトは強くなくても、見ているとだんだん欲しくなっていく感じがするんですよね。
最初は、パッとみてすぐわかるデザインが好きだったんですが、だんだんとEYEVANの良さがわかっていって、これが一番いいなと思うようになりました。」

世界の一流を魅了する新たなデザインに挑戦

EYEVANに入社された時は店舗での販売職からスタートされたのですか?

「そうですね、入社した時から、店舗での販売をやりながら、企画・デザインをやらせていただいていました。大阪の店舗だったのですが、当時の店舗のスタッフは僕一人しかいなかったのを覚えています(笑)。予約制の店舗だったので、そこまで忙しいことはなく、主にデザインの業務がメインでした。」

今までで印象的なプロジェクトはありますか?

「すごくたくさん、思い出みたいにありますね。その中でも特に記憶に残っているのは、2014年、EYEVAN 7285の4回目のコレクションの時に、今はもうないですが、パリの人気セレクトショップ『コレット』で行ったイベントですね。

地下一階を貸し切って、EYEVAN 7285を展示し、鯖江の工場がある福井県の有名な日本酒ブランド『黒龍』を振る舞った一大イベントだったのですが、その時にイベントの ”特別モデル” を作ってくださいと言われて(笑)。僕からすると、海外の、しかもヨーロッパのファッションストアでってなるとかなり大きな目標でしたし、ハードルが高いなと思いましたね。」

特別モデルは完成されたんですか?

「難しかったですが、作ることができました。イベント当日に、オリバーピープルズの創業者の方も来られていて、『こんな素晴らしいものを作るんだったら、オリバーピープルズじゃなくてこっちを売っていたよ』と言っていただいて、すこく嬉しかったですね。僕らがもの作りとして、一番目標にしていた方でしたから。」

そのプロジェクトで、一番苦戦したことはどんなことでしたか?

「『インパクトを与えつつ、EYEVANらしさを失っていないもの』という新しい要素を入れるのが難しかったです。  ”シンプルで美しく、見るほどにこだわりが感じられる” というEYEVAN商品の魅力というか、そのイデオロギーは根強く自分のデザインにこびりついているわけです。
そうなると、インパクトがあるというよりは、静かで美しいデザインにどうしても落ち着いてしまう。ただこの時は、驚かせる、びっくりさせる要素が必要だったので、難しかったです。」

“欲望” こそ飽くなき創造の根源

もの作りのプロセスの中で、EYEVANらしいなと感じるところはありますか?

「例えば、工場へ発注後、半年くらいかけて作ったメガネが、発注前に出した別の図面だったことが過去ありました。普通ならすぐさまやり直しですよね。しかし、発注時に出した図面のものより、以前の図面で実際にできたものの方が、正直かっこよかったんですね(笑)。そして結果、こっちの方が良いからこっちでいこうとなりました。
もの作りに関わるひとりひとりが真剣で、理想が高いことは前提なのですが、『結果的に良ければいい』という、良い意味での “適当さ” もある人が多いと思いますね。」

メガネのデザインってある程度制限があると思うのですが、常に新しいものを作ることに対して、どのように取り組まれているのですか?

「結局必要なものは、 ”欲望” みたいなものだと思います。欲が深くないと、似たようなデザインに落ち着いてしまう気がします。僕は、こういうメガネが欲しいっていうものが、どんどん出てきてしまうんですね。欲しいものをどんどん順番に作っているという感覚です。」

なるほど、欲望がスイッチを入れる秘訣なんですね!

「欲望があるからといって、決して楽ではなくて、実際にそれを作るのは本当に大変ですね。逆に、『このメガネ欲しい!』というスイッチが入らないと全然終わらないです。無理やりにでも欲を駆り立てないといけないという時もありますが、それでも、根っこには『こんなデザインのメガネをかけたい』という欲がないと、新しいものを作り続けるのは、おそらく、無理だと思います。」

今後5年、10年後までに、EYEVANでやってみたいことや、生み出していきたいものなどはありますか?

今やっていることを深めていくだけですね。ある意味、本当に職人だと思っていて。僕がいる間は、特別に良いものを1個でも多く生み出したり、携わらせていただいているブランドをより深く掘り下げたりしていくことだけに集中したいです。
結果を出さないと単にわがままになってしまうのですが、そういう自分のことをすごく理解してくれる会社だと思うので、今やっていることと変わらず、没頭しようと思います。」

成長の秘訣は、頑張る前の角度合わせ

中川さんも販売職からキャリアをスタートされましたが、販売をやって良かったと思うことはありますか?

「僕らのようなもの作りの役割だとしても、販売の経験はあればあるほど、絶対良いと思うんですよね。今東京に4人、企画・デザイナーがいるのですが、全員、販売員出身ですね。
販売をやっていると、本当に細かい部分のサイズや肌に乗せた時の色味の差だけで、売れる時と売れない時、お客さんが満足している時としていない時がわかるようになるんです。本当に微妙な差なのですが、それを学んだ経験がベースにあるからこそ、良いデザインができると思います。」

販売員になることに不安や緊張がある方へ向けてのアドバイスはありますか?

「役立つかどうかを抜きにしても、販売が一番楽しいと思いますよ。音楽に例えるなら、もの作りは楽曲作りで、販売はライブみたいなものです。実際に使う人が喜んでいる姿が直接見られるのは販売ですし、それを毎日やっている人が一番楽しいと思います。
僕でも、展示会などで、年に5回くらいお客さんの前に立つことがあるのですが、前日の夜はアドレナリンが出て、なかなか寝れないほど、本当に販売は楽しいです(笑)。」

今後、販売員を志望する人が、意識した方が良いことはありますか?

「僕が常々思っているのは、頑張る前に、まず角度を合わせることが重要ということですね。ただ頑張っていても、角度が間違っていたら、目標とする場所には行けないどころか、どんどん遠ざかってしまうこともあります。だからまず、一生懸命やることは前提として、何をどう頑張るか、角度を定めようということを、今の新人の子にも伝えています。」

将来的にデザイナーのキャリアを考えている方に向けて、アドバイスはありますか?

「デザイナーの場合も同じですね。美意識・センスを合わせることが、角度を合わせることだと思います。僕が入るずっと前から、EYEVANの歴史の中で目指している美しさがあると思うので、自分の味や特性はあとで乗せるとして、まずはその美意識を合わせることが重要ですね。
僕の場合も、販売を経験していたからこそ、そこが感覚的にズレなくなりました。デザイナーとしてさらに美意識を育てていくのは、さらにその先で、結構遠い道のりを歩まなくてはなりませんが、まずは角度を合わせることが、大切だと思います。」

Epilogue

EYEVANで世界から称賛を受けるデザインを生み出し続けてきた中川さん。デザイナーとしてのあり方や、販売員を経験することの意味を深くお聞きすることができました。
これからも、終わることのない、デザインへの探求を続ける中川さんの新作に、世界中から注目が集まることでしょう。

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