EYEVAN

 


 

EYEVAN × KYOTO
interview 04

「教えてもらったのは、あわじ結びだけ」
平井水引工芸 3代目 平井喜久雄さん(創業明治末/京都市山科区)
日本独自の文化でもある水引は、冠婚葬祭、なくてはならないものとして親しまれています。この水引が手で作られているということを考えてみたことがあるだろうか。平井水引工芸3代目の平井喜久雄さんは、目の前で、線状の水引をくるくると指を使い、魔法のように、あっという間に眼鏡のかたちに作ってくれた。言うまでもないが、そう簡単には作れない。日本でも数少ない水引職人である、平井喜久雄さんにお話を伺いました。
水引について
人にも神様にも必要な“水”

昔、中国から日本に送られてきたものが麻紐でくくって送られてきた。麻紐というのは日本にはなかなかないんで、紙をこよりをした上に、紅花から絞って抽出した色を上から塗って、小笠原流が元となったのか、「右は赤に、左は白にしなさい」という決まりができて、紅白の水引が生まれた。水引という名前の起源は、儀式で神聖な水を引くためのものということで、水引となったと言う人もいるな。神社に行っても必ず手を洗って、口ゆすいでって作法があるけれど、体の悪いものを外に出して、それから神社に入ってくださいってことで、水で清めるでしょう。人間、水がなかったら生きてられない。神様にとっても、必ず水はお供えものにするし、水引って、それほど縁起が良いものを使ってつくられた工芸品。

 

父に教えてもらったのは、あわじ結びだけ
平井水引工芸としては3代目。元々が結納かざりが発祥で、34歳までは、電子機器の仕事をしていて、水引は全くやってない。僕が家で水引をやりだして2年目に父親が他界したもんで、物を見てやるしかない。あわじ結びは教えてもらっていたので、解読していきました。一番大事な、結びです。先日、納めさせていただいた“眼鏡水引”もあわじ結びというのを、真ん中に作ってるんです。それと眼鏡結びと僕ら呼んでたやつがあるんやけど、それを応用した形です。あわじ結びは、どこを引っ張っても解けない、縁起のいい結びで、あわじっていうのはアワビです。水引の本数は基本、奇数。割り切れない数字=縁起が良い。
 

 



継承について
誰かやってほしい
オファーも変わってますね。作ってるのは松竹梅鶴亀という、そのイメージじゃなくて、今一番よく作ってるのが髪飾りとかブローチとかアクセサリー系です。結納かざりを作ることは今はほとんどないです。基本的にもう結納もやってないからそういうお話が聞けへんちゅうのもあったし、死語に近いね。水引自体は京都でも生産されていますが、9割が中国、1割が日本で、京都、愛媛、石川でとにかく紙の産地でまだ残っている。水引の種類はどんどん減っていて、ごくわずかに。水引という工芸は現状の気持ちとしては、誰かやってほしいなと。趣味がてらでもいい。今、水引でアクセサリーとかを作っている人が4人くらいかな。東京、静岡、石川にもいますが、全員と繋がってますね。
譲れないこと
質より量じゃなしに、量より質
普通のご祝儀袋はコンビニとかにもあるけど、しごきが弱いんです。もちろん見た目も悪いです。最初にしごきという作業をやらなかったら折れます。丸になる部分だけを柔らかくする。上に伸びてる部分については、これが逆にそこをやっちゃうと、いろんな方向に水引がバラバラになってしまうんで、駄目になってしまう。1本の水引をどこまでをしごくっていうのは勘ですわ。
伝統について
新しいものを生み出すための原点
伝統は新しいことを生み出すための原点だと思います。だから伝統ばっかり追っかけていると、もう今の人は全くついてこない。だからそれを原点として何かを生み出す。それやったらみんなついてきはる。歴史的なところは原点として持っていて、それを踏まえて、新しい結び方を作ったりしてます。