EYEVAN

 


 

EYEVAN × KYOTO
interview 01

「今までを少し変えて、 どんな素敵なものができるか楽しみにしてる」
伊原染工株式会社 3代目 鳥海清さん(創業1936年/京都市右京区)
印刷技術はこの数十年進歩する中、染め型に染料を混ぜた糊をスケージにあて落とすという、原始的な方法をとっている伊原染工株式会社。調合室には試し刷りしたカラーの窓布が山積みになっており、奥の作業場は壁一面に型版が保管されている。積み重ねてきた歴史と作業の厚みは話を聞かなくても伝わってくる。そんな中、3代目鳥海清さんは驚くことに、あえて自分たちの手で染めるや り方ではできないことを、トライしようと模索している。なぜ、今。染めを通して、鳥海さんが見る景色を伺いました。
染めについて
挑戦すること
私はこの業界に入ってもう50年以上になるからね。いろんな人に絞られて、鍛えられて、今に至ってるんです。 当初は問屋さんからの仕事しかしてなかったんですよ。問屋からの注文として、着物、風呂敷、小物とかを作って、やっていけた。いわば井の中の蛙でした。だけど、今は、外に飛び出して、挑戦すること、 こんなんもどうか、あんなんもどうかというような感覚でやってるんですよね。 長年の経験により何千何万色のデーターを持っているので時代によって流行りがあり京友禅の伝統を守りつつ若い感性にあったものづくりができるように心がけてます。眼鏡の職人さんも時代に合ったものをつくるのは共通ですね。これからどう進展するのかわかりませんけども、何かのお役に立てたらいいなと思ってやらしてもらいましたね。




鯖江と京都
地域に根付いてた分業と職人気質
地域に根付いてた伝統は分業制でたくさんの職人の目がかかることで品質が上がったという眼鏡作りと、うちら染めも同じで、結局は人間の力やね。 機械はほとんど使わず、手作業でやってますから、眼鏡とよく似たもんやと思う。やっぱり自分で考えて作ってくれる人はよろしいね。そういう人は頭がいいんですよね。いつも思うんですが、頭のいい人と勉強できる人というのは違うからね。 また染めも分業で作られていてね。スクリーン型を作り、染、蒸し、水洗整理と 京都をあちこち回すんですよね。風呂敷だったら ミシン屋にも行ったりね。いろんなとこ行くんです。最近はコロナでずっと厳しいからね。廃業するとこも結構出てるんでね。やれるとこが無くなったらどうするのかって言ってます。
伝統とは
続けていくこと
伝統とはなんて、考えたこともないですよ。継続して続けていくことかな。それが伝統かな。歳取ってるだけで何もわからへん人間ですよ。
継承について
人材育成の問題
40年ぐらい前かなと思うんだけど、今、中学から来た子が3人おって、もう気がついたら50歳過ぎになってる。人材育成をと考えていますが、これがどういうぐらいの情勢で仕事が続いていくか、どんな具合になるんやろなと思ってるんですけど。
譲れないことは
譲れないことは、気持ちの良い染めにすることかな。同じ色でも、深みのある色、浅い色、いろいろあるんですけどね。趣のあるというかね。今回作った手ぬぐいも、顔料でもできるんですけど、だいぶ違うと思うんですよ。使っていくと、違いがわかってくる。 でも私らが嫌やなと思うものでも、好きや言う人もいるでしょ。人間それぞれ違うから面白いなあと。無駄で捨ててるもんでも使えるものがあるんちゃうかなって思ったりもするんだけどね。
新しい取り組み
染めで出来ないことをやってみたい
今までのことをちょっと変えてね。着物でもいいし、日本の伝統の江戸小紋なんかをすごく細かくして、私ら手作業の染めでは出来ない、いわゆる機械を使うんだけど。面白いものができるかなと思って今やり出したとこなんですよね。 やっぱり同じことしてたら飽きるんでね。素晴らしいなと思うんだけど、壁紙や新建材とか、何に使ったら一番いいか、その先のことがわからない。どんな素敵なものができるか、皆さんに喜んでもらえたらいいなと思っていますね。